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ここ2日ばかり冬に逆戻りしたような気候が続いている。暖冬今季、その暖かさに慣れた身体には、春先のこの寒さはさすがに応える。7日の午後は雪も降ったようである。
飯田市街地の近く、梅の木が何本か植えられている小さな公園がある。春の花とその香りは、近くの住民のみならず、訪れる人々の心を和ませてくれているが、最近この公園、その周りの変化からか、心寂しい感じがするようになった。手入れをされているとは思えないその梅の木の蕾(つぼみ)は、年々減ってきているように感じられ、余計にそれを助長しているようにも思える。それでも今年も開花の時期を迎え、まだ少ないが、楚々とした花と芳しい香りで私を迎えてくれた。
昨今、再開発と称する動きで、市街地の建物の高さは高くなり、その周りは街路樹さえも減りつつある。高齢化社会と、減って行く人口を思うとき、都会の真似事のように変わっていく市街地と、車の速度を後押しするように太くなる郊外の道路は、やはり、納得いかないというのが正直な気持ちである。使われる税金のこともあるが、そのことで潤うのは、“ほんの一部”という事実と、当然、大きな弊害もあるということは忘れてはいけないことだろう。
里山を後ろに持ち、まだまだ自然は残るこの地域である。もっと“この地の利”を活かした、“この地に合った”、そんな発展のさせ方をしていって欲しい願うが、現実の流れはやや違うようである。公園の心寂しさも、蕾(つぼみ)を減らした梅の木も、まるでそれを嘆いているようにさえ感じる。
何を望むかは別として、国や市の行政のなどの動きを含め、せめて皆が望めばそれが実現可能な“世”であって欲しいと願うのは正直な気持ちだろう。

早いもので、暖冬といわれた今年の冬もそろそろ終わりになる。3月を向かえ一気に暖かくなるのかと思えば、そうでもないようで、なんとも中半端に気温が上がり下がりしている。例年ならばそろそろ野草たちの芽吹きが始まる頃である。
掲載の写真は繁縷(はこべ)。ご存知の通り春の七草の一つである。それもあり春先のイメージが強いが、実際には秋の終わりの頃まで花の咲いているところが見られるようだ。
昔は食用にされたというが、それは七草粥の風習から見て取れる。タンパク質やビタミン類が多く含まれ、薬効成分もあるということだが、その効能は歯茎の炎症・歯痛・打撲傷・腫物・できもの・催乳など意外に多い。
本体を磨り潰して青汁をとり、鍋や油気のないフライパンなどに入れ、食塩を適量加えて加熱しながらよく乾燥させれば緑色のハコベ塩になる。それを指先につけて歯を磨けば槽膿漏の予防や歯ぐきの出血に効くという。また、葉をよくもんで柔らかくしたものを貼れば、はれものや歯痛などにも効くらしい。
人の周りを始め、民間薬として利用できる野草は結構あるようだが、即効性を信じてか、はたまた、単なる思い込みか、つい化学薬品に頼る我々である。その実際の効きめはわからないが、先日服用した薬の副作用で体調を崩した私としては、こうした野草を利用した民間薬は、かなり気になる存在となりつつある。
先人たちの知恵と、その知恵を忘れた現代人。社会全体として、もうそろそろ、その差の大きさに気付いても良い頃ではないのだろうか。

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