早いもので、暖冬といわれた今年の冬もそろそろ終わりになる。3月を向かえ一気に暖かくなるのかと思えば、そうでもないようで、なんとも中半端に気温が上がり下がりしている。例年ならばそろそろ野草たちの芽吹きが始まる頃である。
掲載の写真は繁縷(はこべ)。ご存知の通り春の七草の一つである。それもあり春先のイメージが強いが、実際には秋の終わりの頃まで花の咲いているところが見られるようだ。
昔は食用にされたというが、それは七草粥の風習から見て取れる。タンパク質やビタミン類が多く含まれ、薬効成分もあるということだが、その効能は歯茎の炎症・歯痛・打撲傷・腫物・できもの・催乳など意外に多い。
本体を磨り潰して青汁をとり、鍋や油気のないフライパンなどに入れ、食塩を適量加えて加熱しながらよく乾燥させれば緑色のハコベ塩になる。それを指先につけて歯を磨けば槽膿漏の予防や歯ぐきの出血に効くという。また、葉をよくもんで柔らかくしたものを貼れば、はれものや歯痛などにも効くらしい。
人の周りを始め、民間薬として利用できる野草は結構あるようだが、即効性を信じてか、はたまた、単なる思い込みか、つい化学薬品に頼る我々である。その実際の効きめはわからないが、先日服用した薬の副作用で体調を崩した私としては、こうした野草を利用した民間薬は、かなり気になる存在となりつつある。
先人たちの知恵と、その知恵を忘れた現代人。社会全体として、もうそろそろ、その差の大きさに気付いても良い頃ではないのだろうか。