リハーサル風景 撮影:2012年4月20日寒暖の差が妙に激しい今季、私の住む飯田市の桜もその開花がかなり遅れ気味となった。それでも4月の半ばに差し掛かるころには、見事な花を枝いっぱいに付け始めた。例年ならばその種によってかなりのばらつきがあった開花だが、低温が続いていたせいもあるのか、気温が上がると、満を持したかのように一斉の開花である。
そんな桜の時期、毎年この地でライブを行うシンガーがいる。「豊田勇造」そのシンガーの名である。彼の記事を載せるのは今回で7回目となる。
3年ほど前から、ポスター・チラシ・チケット・ホームページ作成など、スタッフのような形で関わるようになった私だが、例外なく今回も、集客を含めて、諸々に奮闘することになった。今年のタイトルは「桜吹雪」。彼の歌の題名でもある。
ライブは今年も2部構成、アンコールを含めて全16曲のライブ。初っ端から新曲を連発したのには少々驚いたが、その入り方から、今年の彼の内側が見え隠れする。昨年に比べ、多少動員数は減ったが、三十数名の聞き手の中で、ゆっくりと彼の歌が始まった。

昨年、東北を襲った地震。そして、それにより引き起こされた、人災とも言える原発の事故。被災地との繋がりの深い勇造氏、昨年は、「こんな時だから歌いたい歌がある」との彼の言葉どおり、まるでその熱い想いを聞き手にぶつけるようなパワフルなものだった。
そして今年、その視点は、いつもの人に向けたものへと変化しながら、その想いと共に静かににじみ出てくるようなものになっていた。一年が過ぎ、被災地などのライブを続ける中で、整理され、きちんと消化されてきたのだろう。
いまだ残る放射能汚染の脅威の中、震災地の状況は断片的に伝わるものの、遠く離れた地では、その記憶も薄れがちとなるのが現状である。進化するように変わる彼の視点ではないが、我々も報道などで伝わってくる情報に惑わされることなく、現状の真を見極める目を持ちたいものである。
そんな感じを与えてくれた今年のライブ、今まで以上に心に残るものとなった。

打ち上げが終わり、宿泊場所の「のんび荘」へ向かうタクシーに便乗する中、「実はもう一つ考えていたタイトルがあるんですよ」と、彼の歌「そんなんやない」を告げ、市街地こそ避けられたが、結局この地域を通ることになったリニアモーターカーに対して強い懸念を抱いていることを説明すると、「もう要らないですよね、原発もそうですよね」と、即答するように応えてくれた彼に、親近感と共に、以前にも増して強く惹かれたのは事実である。
今年で63歳になるのだろうか、やはり体力が続く限りずっと歌い続けてほしいシンガーである。アマチュアだが、ギター片手に、彼の歌「雲遊天下」を歌わせてもらっている私は、その想いをさらに強くした。

以下、今年のライブの演奏曲目。

〇一部
1.小さな町のライブハウス
2.Iさんの思い出
3.小川先生
4.旅の歌うたい
5.長崎帰り
6.夜よ光れ
7.大文字

〇二部
1.雲遊天下
2.帰郷
3.好きなもの
4.メルトダウン
5.ザ・パラドックス・オブ・アワーエイジ
6.虹の歌
7.満月

〇アンコール
1.花の都ペシャワール
2.桜吹雪

過去の勇造氏のライブ記事は下記。
雲遊天下
恒例「春のライブ」2010
マンゴーシャワーラブレター
春の小さなライブ2009
桜の時期の小さなライブ
あるライブ

豊田勇造氏の公式ホームページ
http://www.toyodayuzo.net/