リハーサル風景その2 撮影:2011年4月22日リハーサル風景その1 撮影:2011年4月22日4月も下旬になる。例年ならば、春特有の天候もそろそろ安定してくる頃だが、寒暖の差は激しく、かなり荒れた空模様の日が多いようである。これも温暖化の賜物か。
そんな4月の22日、この時期恒例の「豊田勇造」氏のライブが行なわれた。先日の投稿でも書いたことだが、イレギュラーとなった一昨年の秋のライブから、ポスター・チラシ・チケット・ホームページ等の制作をやる羽目になった私。職業柄、制作自体は問題はないが、益々希薄になっていく仕事状況の中、作業に向けての精神コントロールは結構難しい。加えて、そのイメージ作りも、恒例のライブゆえの課題が私の頭を悩ませる。今回のサブタイトルは「雲遊天下」、彼の歌の題名である。アマチュアだが、32年ぶりに音楽活動を始めた私が、彼の存在と共に知った名曲の一つ。キャッチコピーとして思いついた「雲遊ぶ空の下、人は何を目指すのか、今もブルーズが問いかける」のフレーズと共に2月の終わりに決めた。
今回のライブ、被災地の状況と、未だ鎮静化できない原発の不穏の状況の影響なのか、前日まで今一つ集客が伸びずにやや心配したが、被災地との繋がりの深い勇造氏の強い想い入れが通じたのか、予想を上回る入場者数となった。大盛況である。

今回もライブは2部構成。「今年は期待してもらってええでぇ~!」、1部の曲の合間の彼の言葉である。それだけで会場は盛り上る。確かに今年の彼は力の入れ具合が違うようだ。弦を切るほど激しいギター演奏と、会場をまきこんでの大合唱。今年で62歳という勇造氏。そんな年齢を感じさせない、エネルギッシュでパワフルなステージである。ふと、「こんな時だからこそ歌いたい歌がある。聴いてもらいたい歌がある」、今年の全国ツアーに向けての彼の言葉を思い出していた。
主だった被害はなかったこの地域、今のところ放射能物質の影響も出てはいない。しかし、全く先の見えない福島原発の不安な状況がそうさせるのか、心なしか人々の苛立ちが見え隠れする。私自身もそうなのかもしれない。今回のライブ、そんな苛立ちも不安感も、一気に吹き飛ばすほどの盛り上りとなった。恐らく、勇造氏自身も、中にあるものを一緒に吹き飛ばす、そんな意もあったのではないだろうか。

「急ぎすぎた旅人が、峠の手前で、坂道を見上げながら途方にくれている、まるで同じよう、この国の今」。ライブの副題にさせてもらった彼の歌、“雲遊天下”の歌い出しの部分である。
戦後、先進国に追いつけ追い越せと、わき目も振らずに我武者羅に突っ走ってきたこの国。結果、経済大国と呼ばれるまでにはなったが、バブル景気も手伝いエネルギー消費は拡大。灯りが主流だった電気の需要は幅を広げ、今やオール電化住宅が建ち始めている。そんな状況の後押しと、中枢部に蠢く諸々の思惑が重なって、電力需要を賄う名目の元、唯一の被曝国が原子力に手を染めた。
この原子力という、地球規模のリスクを背負い、エネルギーを無駄食いしながら、我々人類は何を求め、どこに向かうのか。昨今飯田市では、リニアモーターカーが通ることを、マスコミまでまきこんで地域民の総意のように騒いでいるようだが、その膨大な電力の供給問題を始め、電磁波を含めた諸々の弊害が隠ぺいされたままの状況下で、何を期待し、何を望むのか。いい加減に目を覚ましても良いだろう。
勇造氏の雲遊天下は「荷物少し減らして、歩きはじめよう、道端に咲く名も知らぬ花を、数えながら行こう」「大空の下で、遊ぶ雲のように、人が生きた形など、何もとどまらぬものを」と締め括る。
今回のライブ、その雲遊天下を含めて、17曲を歌ってくれた。その興奮がいまだ冷めやらない今日、彼がくれたエネルギーを力に、しっかりと前を向いて歩いていきたいと思っている。

私事になるが、実はこの雲遊天下をカバー曲としてライブなどで歌わせてもらっている。そのことを告げると「自分の歌を歌ってくれるのが一番嬉しいんですよ」と人懐こそうな笑顔で返してくれた彼に感謝して、今回の勇造ライブの報告とする。

今回のライブに来られなかった勇造ファンのために、今年彼が飯田で演奏した曲目を載せておくことにする。
第1部
1.再会
2.桜吹雪
3.雲遊天下
4.メコンリバーブルース
5.好きなもの
6.ありがとうボブディラン
7.海のはじまり
第2部
1.パクセー
2.帰郷
3.怒りのぶどう
4.京言葉さんづくし
5.走れアルマジロ
6.虹のうた?(仮名らしい)
7.大文字
アンコール1
1.それで十分
2.花の都ペシャワール
アンコール2
1.勇造ないないづくし

また、過去の勇造氏のライブ記事は下記。
恒例「春のライブ」2010
マンゴーシャワーラブレター
春の小さなライブ2009
桜の時期の小さなライブ
あるライブ

豊田勇造氏の公式ホームページ
http://www.toyodayuzo.net/