首からブルースハープ、懐かしい~♪ 撮影日:2009年3月7日 撮影:管理人結構ギターの上手い方がおられます。 撮影日:2009年3月7日 撮影:管理人3月に入り、春先特有の日替わりの天候が続く。啓蟄を過ぎ、朝晩はまだ多少冷え込むが、そろそろ本格的な春の気配が濃厚になってくる頃である。昨日、7日の土曜日、久々青空が広がり春のポカポカ陽気。夕方6時を回っても気温は9℃前後と、結構暖かい一日となった。そんな陽気に誘われた訳ではないが、市内のライブハウスに行くため、久々に夜の市街地に繰り出してみた。
ここ飯田市にも、いくつかのライブハウスらしきものがある。正直、私自身あまり行くことはない。だが、そんな私でも時折足を向ける場所がある。知人が経営していることもあるが、以前、「あるライブ」・「桜の時期の小さなライブ」と2回ほど載せた「豊田勇造」氏のライブコンサートを行った店である。「ふぉの」という名のその店、毎月の第一土曜日は「フォーク酒場」となる。一般人もギター片手にマイクの前に立てる“歌声酒場”のようなものと認識していたが、以前から気になっていたこともあって、少々迷ったが顔を出してみることにした。
扉を開け、やや緊張気味に店に入った私に、「こんばんわ♪」の明るい声。すでに常連と思しき人が軽やかにギターを奏でる中、空いているテーブル席へ陣取った。アコースティックな音色と聞き覚えのあるメロディー。そこには、懐かしさの中、実にゆったりとした時が流れていた。
昔、まだフォーク・和製ブルースといわれる音楽が若者達を魅了していた頃、アマチュアの“ミュージシャンモドキ”を含め、喫茶店などを利用した小さなコンサートが度々行われていた。当時若者たちは決して裕福とはいえなかったが、趣味・道楽、プロ・アマチュアの境を感じることもなく、それが己の全てと言わんばかりにギターをかき鳴らしながら歌っていた。社会への不満は抱えながらも、緩やかな右肩上がりの経済動向の中、先行きの不安は全く無いかのように思えた時代である。
やがて時代の変化に合わないかのように、店も、ミュージシャンも、若者達の動向も、徐々にその形を変えていった。今ではこの「ふぉの」のように、ライブハウスを兼ねたような小さな店は、全国合わせてもそう多くは残っていないと聞く。なんとも寂しい限りだが、そんな中、今まで運営を続けていてくれたことに、嬉しさと感謝の念が浮かぶのは正直な気持ちである。変わらず顔を出している常連達がそれを支えたことも事実だろう。
経済向上と効率ばかりが求められる今の時代にあって、こうした空間と時の流れの存在は、その社会自体の許容の大きさを表す指標ともいえる。今の経済主導型社会がそれを認めるか否かは別としても、例えGDPが下がろうとも、せめて、そんな“ゆとり”ぐらいは持てる社会であって欲しいと実感する。
ともあれ、面倒な能書きは別としても、私にとってその夕べの一時は、心の準備もないままに、30年ぶりにギターを抱え人前に出る羽目になった恥ずかしさを差し引いてもまだ余りある、実に楽しい時間となったのは確かである。

※ふぉの:
フォーク&ブルースを中心としたライブハウス。
第一土曜日は「フォーク酒場」、第三土曜日は「土曜ライブ」、双方とも一般用に開放されるライブ空間となる。
長野県飯田市中央通り4-1 金太丸ビルB1F
TEL&FAX : 0265-52-6459
URL:http://phono-k.hp.infoseek.co.jp/