汗だくで熱唱する大塚まさじ氏 撮影:2010年9月3日・管理人故沢田としき氏の絵の前で歌う大塚まさじ氏 撮影:2010年9月3日・管理人9月になったというのに猛暑が続く日本列島、飯田地方も例外ではなく、週末には36.1℃ という記録的な気温になった日もあったようだ。この時期になると少々身体もへばり気味、暑さに耐えるための力も薄れてくる。夏の疲れが出るのはこれからなのだろう。
そんな9月の始め、風越山麓にある料理・民宿の「のんび荘」でひとつのライブがあった。大塚まさじ氏。そのライブを行なった人物の名である。1960年代の終わりから70年の前半、関西フォークの核を成す存在として登場した人物。いわゆるシンガーソングライターである。
ひょんなことで、ポスター・チラシ・チケットなど、ネットを含め、その制作をする羽目になった私は、彼の昔からのファンでもある。会場が市街地からやや離れていることもあり、人の入りが少し心配されたが、関係者の努力の甲斐あってか、まずまずの動員数となった。集まった人の年齢層がやや高めなのを思うと、やはりあの時代を象徴する人物ということなのだろう。
打ち上げでファンと語らう 撮影:2010年9月3日・管理人知人ぜんべ氏を交えてのアンコール 撮影:2010年9月3日・管理人まず、前座として「田辺」という人形劇から始まった。この人形劇、“間”がなんとも良い。「クスっ」と来て、「クスクスっ」となり、「あははは」と軽い笑いを誘う。聞けば結構ファンがいるようで、あまり馴染みのない私も、「なるほど」と納得させられた。20分程度の、その前座の出し物が終わり、いよいよライブの本番である。掛けられた故「沢田としき」氏の絵の前に立ち、あの「月の祭り」から入った。名曲である。
今年還暦を迎えたという彼、何かを吹っ切ったように、まるで残った道を掛け上がるかような、強いエネルギーのようなものを感じさせてくれた。当時のスタンダードナンバーを交えた演奏に会場は大合唱、興奮のまま幕を閉じた。

思えば5年前の1月、誘われるままに聞きに来た。老いなのか過渡期だったのか、全盛期のころと比較した訳ではないが、その歌声に衰えのようなものを感じて、なんとなく寂しさを憶えたことを思い出す。斯く言う私は50代の後半、赤いちゃんちゃんこは目の前である。4月に飯田に訪れた「豊田勇造」氏といい、そして今回の「大塚まさじ」氏といい、老いることを正面から捉えたその見事な生き様は、私の胸に勇気と力のようなものを残していった。

菅だ小沢だと、マスコミをまき込み国民不在の中で大騒ぎをしている現政権。国際社会の中、きちんと国の立場を明確にした上で、たとえ富は築けなくとも、“老いるまで”心豊かに生きて行ける、そんな未来像を見せて欲しいものだが、高齢者の安否も分からぬ現状では、それも夢のまた夢なのか。だが、もしかしたら、我々一人一人の生き方・考え方が、そんな未来の一番大きなカギを握っているのかもしれない。
そんなことを感じさせてくれた今回の「大塚まさじ」氏のライブ。「老いることは悪いことではない」。やはり信じてみたいことである。