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第3回 自家製粉  味にこだわれば、やはりスローフード
 刈り取りから脱穀と追いかけ、前回で終わる予定であった“そば”だが、「今日の一枚」を撮る
ため立ち寄った「のんび荘」で、幸運な事に製粉の作業場を見せてもらうことができた。先日刈り
取った“蕎麦の実のその後”も見せてもらった。殻はまだついているがツヤツヤしていた。
味を考えれば自家製粉・・・
 午前中で忙しい時間帯のため、さほど詳しく聞くわけにはいかなかっ
たが、「蕎麦の実」から「そば粉」になる概略ぐらいは理解できた。
 皆で刈り取った蕎麦の実もそうだが、農家から入手した蕎麦の実は、
まだ小石などが混じっている。それを米びつのように見える装置を使っ
て取り除く。その後別の機械を使い、空気(風)で蕎麦の実同士を、撹拌
するようにこすり合わせ、こびりついた汚れをきれいに落とす。結果、
先ほど見せてもらったようなツヤツヤの蕎麦の実になる。この方法が、
一番熱を抑え、蕎麦が変質しないという。
 次に精米機のような装置にかけて殻を剥く。写真では分かり難いのだ
が、剥かれた実は少し透明感があり、とてもきれいなものだった。
 最後に電動の石臼で粉にするのだが、実際に稼動させて、そばを挽い
て見せてくれたが、かなりゆっくりとした動きだ。効率のみに主眼を置
けば、速く回した方が効率は上がるはずである。だがそれでは、そばが
熱を帯び、独特の「しっとり感」が損なわれると彼は言う。何回も繰り
返し、やっと今の速度にたどり着いたのだろう。


砂や小石をこれで取除く



これで蕎麦の実を綺麗にする


この機械でそばの殻を剥く
 工場などで生産され、一般に「そば粉」として売られているものも、
規模こそ違うが、今では電動石臼で挽かれているものが多くなってきた
と言う。それでも自家製粉にこだわるのは、出来た粉を手で触り、手で
打ち、常に「そば」に触れていたいのだと彼は言う。
 昔から日本人は土に触れ、作物を作り、また土を耕し、次の年の収穫
のために準備をする、海辺で魚を獲って生活する人々も形こそ違うが、
見て触れて自然と共に生きてきたように思う。もしかしたら、そこが「スローフード」の原点なの
かもしれないと考えさせられた。

剥かれたそばの中身はここに溜まる

こちらには、そば殻が出て来る

人力ではないが立派な石臼である
 「のんび荘」では、毎年この時期に自家植の蕎麦を使った「そばまつり」を行うという。幸運な
事に今回のことで私も参加させてもらえることとなった。その報告は、機会があればいずれまた。
最後に・・・
 追加となった今回を含め、3回にわたり「そば」を通して「スローフード」を考えてみたが、そ
の中に現代社会が失った大切なものを感じた。豊さを求め日々走り続けている私たちだが、一度足
を止め、真の豊さとは何かを問いなおす必要があるのかもしれない。
 取材の協力と「そばまつり」に参加をさせてくれる「のんび荘」に感謝をしながら、「そば」は
今回で終わることとする。
取材協力

















料理民宿・自家製粉手打ちそば のんび荘
連絡先
Tel・Fax:0265-22-0755
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