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第1回 蕎麦の刈り取りと手打ちそば
美味しいそばを食べたい!
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私の住んでいる所から北西の方向に風越山(ふうえつざん)が見える。その麓に手打ちそばを食べ
さてくれる店がある。以前は旧市内でも、有名な手打ちそば屋があったのだが、市街地の空洞化現
象もあり他地域へ移って行ってしまった。そんな中、知人の紹介で知ることとなった店なのだが、
久々に“そば”の本当の味と出会ったような気がした。また、店に出せるほどの量は採れないらし
いが、土地を借り、自家製蕎麦の栽培もしているという。そんなことから私の中に、ある固定した
イメージが出来上がっていた。「頑固一徹、こだわりを守り、妥協を許さない職人」という・・・。
ひょんな事からその店の自家製蕎麦の刈り取りに参加することになったのだが、私の抱いていた
イメージはあっけなく崩れ、それと共に真の意味の「スローフード」を知ることとなる。
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◆ そして蕎麦畑へ・・・
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蕎麦刈りには店の家族を含めて十数名が参加した。現在、蕎麦の国内
自給率は5%程度らしいが、店で使うそばは県内の農家から調達してい
るとのこと。「ここで採れた蕎麦はお店に出すんですか?」と言う問い
に「店に出せる量は採れませんよ。それに、この労力と想いは金額には
換算できませんからね。みんなで楽しんで食べれば終わりですよ。」と
笑いながら言った。
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◆ 月日をかけ苦労の末、やっと手に入る食物
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刈り取った蕎麦はワラで束ねる
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束ねた蕎麦はハザにかけ乾燥
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蕎麦畑は無農薬ということもあり草が同居している。その中から同居
人の草を避けて蕎麦だけを刈り取るのは、小さな畑とはいえかなり大変
である。それも、にわか農夫の集まりで・・・。
刈り取り作業が半ばに差しかかり、精神的にも肉体的にも疲れがピー
クになった頃誰かが「効率を考えると、農家が農薬を使いたくなるのは
わかるよねぇ。」と言った。確かに効率に目を向けた場合、農薬を使わ
ざるを得ないのかもしれない。しかし、本来食とは何かを考えると収益
(金銭)だけのための効率を考えるのは少々疑問が残る。
そんな中黙々と蕎麦を刈り、乾燥のためのハザを立てながら手伝いに
来てくれた人に気を配る。そんな「店のマスター」を見ていると「美味
しい“そば”をみんなで食べたい」「自分の一生懸命打った“そば”を
味わってもらいたい」という想いと、片意地を張らずに、自然で静かで
それでいて強い、彼の理屈抜きの「こだわり」を見たような気がした。
そして本当の「スローフードとは何か」を教えられたような気がした。
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■ 取材協力
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料理民宿・自家製粉手打ちそば
のんび荘
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■ 連絡先
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Tel・Fax:0265-22-0755
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