秋海棠(しゅうかいどう) 撮影日:2008年9月7日 撮影:管理人秋海棠(しゅうかいどう) 撮影日:2008年9月7日 撮影:管理人猛暑が続いた今年だが、9月も終わりに近づき朝晩の気温も20℃をかなり下回るようになってきた。日中との気温の差もあるのか、朝夕など半袖ではやや寒いと感じる飯田地方である。
昨今、益々都市化の進むこの地方だが、それでも点在する田んぼには、黄金色に色付いた稲穂が頭を垂れ、早い所ではすでに稲刈りを終えているところも見受けられる。山の麓の公園辺りも、まだ紅葉には至らないものの、草木は夏の力強い色から少し“くすみ”を見せ始めている。野も山も、少しずつだが秋の気配が感じられるようにはなってきた。ただ、このところの急激な気温低下は気にかかるところ、予想では明日の最低温度は10℃という。まだ9月を思うと、やはり気候の異常は否めない。
掲載の写真は「秋海棠(しゅうかいどう)」。山麓公園近くの林の中で見つけたもの。思いのほか古くから存在する植物のようで、江戸時代の初期に中国東南部から観賞用として持ちこまれたとされている。元々は温かい地方の植物だが、この山間に根付くところを見ると、結構寒さには強いのだろう。関東以西などを中心にかなり自生しているということだ。雌雄別花らしく、萼片が大きく開き、中心に黄色い花芯が見える方が雄花である。
面白いことにこの植物、結実はするもののその種子は地面に落ちても発芽することがない。その代わりという訳ではないのだろうが、葉の付け根にできる「むかご」が落ち、それによって繁殖するようだ。また、挿し木・挿し葉でも簡単に増やすことができるということだが、園芸用として庭などに多く植えらるのはそんな理由もあるのかもしれない。
「花海棠(はなかいどう)」と花の色が類似し、秋に咲くことからその名が付いたということだが、我が心の中にある秋のイメージとは少々食い違うように思うのはその花の色の成せる業なのか。
江戸時代に中国南部から渡来し、日本の秋を見つづけてきたこの花、変わりつつある気候の中、己に付いた“秋”が失われつつあるのをどう感じているのだろう。
和名を「秋海棠(しゅうかいどう)」。シュウカイドウ科シュウカイドウ属(ベゴニア属)の多年草。学名は「Begonia evansiana」となる。