秋の深まりと共に、夏のスポーツ“プロ野球”もシーズンの終わりを迎える。これは、本場“ベースボール”の国でも同様である。そろそろ今シーズンの王者を決めるシリーズに入るようだ。
そんな時、一年半のブランクを乗り越え、再びメジャーリーグのマウンドに立つべく動き始めた男の名がTVから流れた。“野茂英雄”、多分、誰もが一度は耳にしたことがある名ではないだろうか。決して熱狂的ファンという訳ではないのだが、その直向ともいえる生き方に惹かれ、以前から注目していた人物である。肘の手術の後、シーズン途中でマイナーに落ち、その後の動向が気になっていた。それゆえに、この情報にかなり喜んだのは事実である。
“ベネズエラウィンターリーグ”。彼が、再び米大リーグでのメジャー入りを果たすために選んだベースボールリーグの名である。このウィンターリーグ、その名の通り毎年11月から2月にかけて開催される。大リーグ等のオフシーズンということもあり、調整のために出場するメジャーリーガーも多く、かなりレベルは高いという話しである。
そんな彼が、自身の出身である社会人野球界の縮小を憂い、若い選手たちに活動の場を提供しようと、2003年に立ち上げた“NOMO Baseball Club(野茂ベースボールクラブ)”というのがある。彼の言葉「夢をあきらめるな!」を励みに、プロ入りを果たした選手もいる。その言葉は、彼の生き様から、私には「生きることをあきらめるな!」とも聞こえていた。弱き者・落ち行くものは切り捨てる、そんな今の世にあって、かなり強く印象に残っている。
何を目指し、どう生きるのか。その形は区々なれど、前を向き直向に生きられる世であって欲しい。政治の腐敗、経済の格差、犯罪は惨忍さを増し、人の心は荒廃して行くように思える中、その行方は我々一人一人の想いと、その生き方にかかっているのかもしれない。久々TVから流れたその名前に、ふとそんな思いが心に湧き上がっていた。
そんな彼も、すでに39歳。年齢的にもそろそろ限界に近いだろう。是非とも、もう一度メジャーリーガーとしてマウンドに立つ姿は見たいものだが、例えそれが叶わずとも、米大リーガーとして、一流のプロスポーツ選手として、そして何より、一人の“人”として、私の脳裏にいつまでも残るのは確かである。