私の部屋には、まだ“486”の名のCPUを持つパソコンがある。OSはWindows3.1と Windows95のマルチブートにしてある。SCSIの外付けHDDが2台と、5,600bpsのモデムが繋がる、高さ63cmのタワータイプ。今も現役だが、寿命ゆえに、やもなく交換したディスプレイの接続系統不足のため、その度ケーブルを差し替えねばならず、その使用にはかなり不便を強いられるようになった。それもあり、最近は使用頻度は下がってきていた。
24日の午前中のこと。あるデータを調べるため、その486マシンを久しぶりに立ち上げることになった。ディスプレイケーブルを差し替え、電源ON。「ウィーン、ガガガ」、なんともやかましいが、ちょっと懐かしいその音。しばしの郷愁。しかし、SCSI認識の段階で止まり立ちあがらない様子である。
どうやら外付けHDDの一台が動いていないようだ。カバーを外し電源を入れてみるが、小さく「ウィーンウィン」と繰り返すHDD。モーターが回りきらない感じである。かなり何度もONとOFFを繰り返したが、状況に全く変化はない。半ばあきらめ気味の私の頭を、古き“伝説”の言葉が過った。「ハードディスクは振れば直る!」。
かなり希(まれ)なのだが、HDDは古くなったり長い間使わなかったりすると、ヘッドがシッピングゾーンに引っ掛かり、シークしなくなることがある。確かに、そうした場合に振れば、その引っ掛かりが外れることがあるとは思うのだが、それが全てに通用するとは思えず、なんとも不可思議なその“伝説”である。
「そういえばTVが真空管の頃は、叩けば直る昔のテレビなんて言っていたな」などとほざきつつ、ものは試しとばかりに、そのHDDを左右にゆさゆさとしばらく振ってみる。
連れ合いの「どう見ても、ものを修理しているようには見えないわね」の突っ込みを尻目に、電源ON。「ウィーンカリカリカリ」・・・あれま!直った!
どうやらデータは無事の様子。まだなんとか現役を保てそうな、その古きパソコンであった。
マニアの間の言い伝え、実(まこと)に恐るべし。

※通常HDDに異変の兆候が見られた場合、可能ならばデータのバックアップを行ない、速やかにHDDの交換をすることを推奨する。