梅雨が近いのか、午後辺りからどんより曇る日が多くなってきた。5月の終わり、31日には、ここ南信地方でも雹が降り、農作物に大きな被害が出たと聞いている。続く天候不順は増す一方に思え、これから向かえる梅雨への不安を感じさせるここ数日だが、日中でも気温はさほど上がらないようで、部屋の中にいてもやや肌寒さを感じる。
そんな6月の初めだが、山の麓では空木(うつぎ)の花が真っ盛りとなる。毎年、5月終わりから6月の初旬頃に花を咲かせるが、“卯の花(うのはな)”の名で、唱歌“夏は来ぬ”の歌詞に出てくることは、誰しも知るところだろう。
この空木(うつぎ)という名前、茎や根の中心が空洞のために付いたと聞いているが、“卯の花(うのはな)”という名は、卯月(うづき)の頃に花を咲かせることがその由来のようである。もっとも、この場合の“卯月(うづき)”とは旧暦の4月のことを言い、今の5月頃となるわけだが、新暦となった今でも、卯月(うづき)は4月のことを指している。
ところでこの卯(う)という言葉、十二支でいう“卯”のことのようだが、調べたところでは、卯(ぼう)とも読まれ、茂(ぼう:しげる)または、冒(ぼう:おおうの意)の意味があるらしい。すなわち卯月(うづき)とは、草木が茂り始める月ということのようである。その名の由来に、季節と共に生きていた遠き祖先の暮らしぶりが窺えるが、今日(こんにち)街中では、生垣も、この空木(うつぎ)も、ほとんど見かけることはなくなった。
空木(うつぎ)、咲いた花の別名を卯の花(うのはな)、ユキノシタ科ウツギ属、日本原産の落葉低木となる。
この花が終わりを迎える頃、この山の麓にも、梅雨の足音が聞こえ始める。