大型連休が終わり、早一週間経つ。日中の気温は22~23℃程度、先日の夏日(なつび)となった時とは違い、朝晩はやや肌寒さを感じる飯田地方である。
先日のこと、連れ合いが「今年イタドリを見ないねぇ」と言う。最近、山麓を訪れる回数が減った私だが、それでも4月の終わり頃から何度も目にしている。田舎とはいえ市街地近くの暮し、自然の少なさを痛感しながら、その虎杖(いたどり)採取のため山麓まで出向く。ちなみに、2枚目に掲載の写真は、その時の成果。3枚目は昨年8月に撮影した花である。
山野のどこにでも普通に見られる野草、虎杖(いたどり)。春、5月ともなると、タケノコ状の新芽が至るところで顔を出し始めるが、この新芽が食用になるのは結構知られるところだろう。私が幼き頃、近所の少年たちが採ってきた虎杖(いたどり)を一本もらい、塩をつけながら皮を剥いてかぶりついたのを憶えている。独特の歯ごたえとその酸味は、忘れられない味として、その香りと共に今でも記憶に残っている。
ところで、この“虎杖”という漢字、読み方との違和感を感じるが、若芽に見られる斑点状の模様を、虎の模様に例えたという中国名の「虎杖(こじょう)」から来ているようである。日本語での読み方は、傷などの血止めの効果とその鎮痛作用※があるということから、痛みを取る意味で「痛取り(いたどり)」になったという説と、表皮から糸状のものが取れるため、「糸取(いとどり)」が「いたどり」に変じたという説があるようだ。どちらにしても、中国名との混合名と思われる。
また、古来から中国では、この根を「虎杖根(こじょうこん)」といい、漢方薬として利用されているようである。虎杖(いたどり)食卓へ 撮影日:2007年5月13日 撮影:管理人
食用と薬用、毎度のことだが先人たちの知恵と、自然の持つ力のようなものを感じざるを得ないが、我が手によって採取されたその虎杖(いたどり)は、皮を剥かれ、筋を取られ、塩に塗され、一晩かけてアク抜きされた後、塩抜きされて食卓にお目見えとなった。
酸味と歯ごたえ。野性味あるその味は、一時の幸福感と自然の風を感じさせてくれる。本来、旬を味わうということは、こういうことなのだろう。実感である。
虎杖(いたどり)、タデ科タデ属の多年草。地域によっては「スイバ」・「スカンポ」などとも呼ぶようだが、本来それはギシギシ属の酸葉(すいば)を指す。ここ飯田地方では酸葉(すいば)は「スイコンボウ」、虎杖(いたどり)は「イタンドリ」と呼んでいる。

※若葉をもんで患部に塗る。実際には小さな傷の出血を止める程度。