昨日、冬型の気圧配置が強まったせいか、東京では霙まじりの荒れた天候となったようだ。ここ飯田地方も、雪とまではならなかったが、風が強く、日中でもあまり気温は上がらなかった。今が満開の桜、これで咲いている期間が多少延びる予感はするが、この寒さ、すでに暖かさに慣れ始めた身体にはさすがに辛いものがある。
掲載の写真は油瀝青(あぶらちゃん)という。植物の名にしてはなんとも奇妙な響きに感じるが、その種子から絞った油を、灯火などに使用したことから付いた名前とのことである。ちなみに“瀝青(ちゃん)”は、瀝青(れきせい)※の中国語の読み方らしい。
この油瀝青(あぶらちゃん)、雌雄異株ということだが、花の感じから、写真のものは雄株だろうか。この時期、山の麓では結構普通に見られる。花芽の多いものはそれなりに目を引くが、花自体は小さく、あまり目立つ存在とはいえないだろう。いかにも自生する植物らしく、そこが好めるところである。クスノキ科シロモジ属の落葉低木となる。
先日、TVの番組で南アルプスの異変を報じていた。温暖化の影響で動物・植物の生態系のバランスは大きく崩れ、森林などに大きな被害が出ているらしい。結果として、山は荒れ、そこに暮す人々にも大きな影響が出ることになる。
所詮人の招いたことと思っては見ても、自然と共に暮し、異変の要因を作り出す確率の低い人々が、真っ先にその被害に遇うのは、やはり不条理と思わざるを得ないだろう。“せめて”、自然と乖離して暮す我々は、気候を含むこの異変を、人が求めた欲の捌け口の結果として真摯に受けとめ、可能な限りその要因となる行動は止めるべきと感じる。
まるで春を告げるかのように咲く、こうした花々を見るにつけ、相変わらず減ることのない、茂みの中などに散乱するゴミの現状に、人の持つ傲慢(ごうまん)さと身勝手さを感じ、なんとも寂しい気持ちにさせられるのは確かである。

※瀝青(れきせい):
天然のアスファルト・タール・ピッチなど、黒色の粘着性のある物質の総称。また、石炭を加圧下でベンゼンを用いて抽出したときの抽出物。チャン。ビチューメン。
(大辞泉から)