楮 (こうぞ)の花楮 (こうぞ)の花アップ5月も終盤になった。気温は低く天候も今一つパッとしないこの頃だが、山の麓では花の時期もそろそろ終わりを迎え、色濃くなった緑が一面を覆い始めている。
そんな中、昨年“今日の一枚”としてその実を載せたことのある、楮(こうぞ)の花を見つけた。生育する場所が悪いのか、昨年載せたものよりかなり貧弱ではあるのだが。
掲載の写真は雌花。来月の終わり頃には、透明感のある褐色に熟した木苺のような実が見られるようになる。同様にその実は食べられる。
この楮(こうぞ)という名、「紙麻(かみそ)」から「かみぞ」となり、そして今の「こうぞ」に変化したという説が有力のようだが、昔から三椏 (みつまた)などと共に紙の原料とされてきた。トロロアオイの根やノリウツギの樹皮などから抽出した「ねり」と呼ばれる粘剤と混ぜて、流漉き(ながしすき)という日本独特な技法で紙にする。それがご存知の和紙になるのだが、そのことからもそうした名の由来は頷ける。
その和紙も洋紙に圧され生産も利用も減ってきたようだが、この国の風土と気候が育てた文化である、薄くて強靭な味わいのある美しい紙として、その製法と共に廃れることなくずっと残って欲しいものである。