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第2回 活きた土と古代米
 私が住んでいる近くでは区画整理が行われたところがあり、そこで見かける田は、水漏れ防止の
ためなのか土の畔は無く、コンクリートで覆われているものが目に付く。農業に疎い我々には実際
のメリットは分からないが、見た目からも寂しさを感じていた。
古代米の田へ・・・
 温室内の説明を粗方終え、彼は我々を外の田んぼに案内してくれた。
取材したのは11月の初め、ほとんどの田は刈り取り前であり、稲穂は
見事に頭を垂れていた。一見雑然と見える田んぼには、うるち米を始め
黒米などの古代米が植えられている。稲を手に取りその違いを説明して
くれたのだが、素人の私達には、恥ずかしい話し、色の違いくらいしか
判別できなかった。
 リンゴなどの果樹は、品種改良のため病気や害虫に弱くなっていると
古代米の田んぼ

古代米の植えられた田んぼ
聞くが、やはり稲も収穫量をふやすなどの理由から品種改良され、本来の味を失い、あげく病気に
弱く頻繁に農薬を必要とするようになった。何のための品種改良かと嘆く言葉に、彼の古代米への
こだわりがうかがえる。
 いくつかの田を見せてもらっている中、畔に柿の木が植えられているのが目に付いた。まだかな
り小さい木で、実を収穫するまでとは行かないようだが、柿の葉は田んぼにすき込めば、最高の肥
料になると言う。
 植えられていたのは甘柿。昨年辺りから、温暖化で干し柿が打撃を受けている。何年か後、干し
柿が作れない気候になっても、その実を利用できるようにと甘柿を植えたと言う。その逞しさ、敬
服すると共に、そうせざるを得ない今の地球環境に、ある種の危機感を覚えたのも事実である。
土を生き返らせる・・・
黒米の穂

これは黒米の穂

うるち米の田

うるち米の田んぼ
 化学肥料は土を駄目にすると聞く。彼の話しでは、それを生きかえら
せるのに15年かかったということだ。壊すのはたやすいが、復活させ
るのはその何十倍もの時間と、多大な労力が要る。以前から自然破壊に
対して言われ続けて来たことだが、当然それは土に対しても同じことな
のだろう。
 「昔に比べると便利にはなったけど、失ってきたものは結構大きいで
すよね」の言葉に「それで得た結果がこれではね」そう言った彼の表情
が印象的だった。
 最後に温室の近くにある緑米の田んぼを見せてもらったのだが、そこ
にイナゴがいるのを見つけ、「稲を荒らしませんか?」の問いに「ほと
んどの虫は草の方が好きなんですよ。だから、土手の草は極力刈らない
んですよ」と笑いながら言った。
 最近見かける、コンクリートの板に囲まれ畔が無く草も無い田んぼ。
多分そこでは農薬の散布は多くなり、化学肥料も多量に使うことを余儀
なくされるだろう。草があり、虫がいて、自然の持つ力で野菜や米を作る。やはり、それが理想な
のかも知れない。嬉しいことに彼の田や畑には、どうやらその自然の力を持った土が蘇っているよ
うである。
黒米の穂
これも黒米の穂
畔の柿の木
畔に柿の木が植わっている
緑米の田んぼ
緑米の田んぼ
最後に・・・
 掲載が遅れ、結果やや散文的になってしまった今回のスローフードだが、この農園訪問で、ふと
米国型農業のことが頭に浮かんだ。化学肥料を大量に与え収量を増やし、その土が駄目になれば移
動し、別の場所でまたそれを繰り返す。食糧危機が危ぶまれている今世紀、穀物の収量を上げる必
要性は否定できないが、その供給にかなりのアンバランスが生じているのも事実である。我々を含
め先進国と呼ばれている国々は、食料の無駄食いを止め、環境面をも含めた穀物の生産を考えてい
く必要があるように感じる。
 この農園のような取り組みが、即刻そうした問題解決に繋がるとは思わないが、本来農業国だっ
たこの日本。戦後、怒涛のように入り込んだ近代化の流れの中、それと共に失ったもの、得たもの
をもう一度見なおし、先人からの知恵を活かした取り組みが今こそ要るのかもしれない。そして、
それを支えられるのは私たち消費者なのかもしれない。
 先日我が家では、この農園から買った緑米と黒米で餅をついた。その餅は、売っている出来合い
の物にはない、もち米本来の甘味と旨みで私を満たしてくれたことを付け加え、その米を栽培した
農園に感謝しながら、今回で“野菜作りと古代米”を終わることにする。
取材協力
農園さくら
赤米(玄米)とうるち米
赤米(玄米)とうるち米
緑米と黒米(玄米)
緑米と黒米(玄米)
ホームページ
http://www.janis.or.jp/users/sakuraen/
連絡先
E-Mail:sakuraen@janis.or.jp
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