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第1回 不揃いでも美味しい野菜
 ここ飯田地方、かなり減ってきてはいるが、まだ田や畑は残っている。私が子供の頃は、一年間
全て賄えなくても、自宅で食べる米を作っているところは多かった。足らない分は、雑穀や麦を混
ぜ食べたものである。
 何年か前から私の家では、健康を考えて雑穀や黒米などを混ぜてご飯を炊いている。たまたま、
近くのスーパーマーケットで味の良い無農薬の黒米を見つけた。それを生産したところが地元にあ
ることから、妻と共に訪ねることにした。
そしてその農園へ・・・
 いくら地元とはいえ初めて行くところである。問い合わせの返事とし
て届いた、メールの内容を頼りに目指す農園まで。
 農作業中にお邪魔したのだが、ご主人は快く向かえてくれた。目の前
には大きな温室がある。以前、花の栽培に使っていたものを、野菜作り
に利用しているということだ。
 中に入りまず目に付いたのは、ハザに掛かった麦。米の収穫が落ちた
時の、食料確保用に作り始めたらしいが、もう10数年になると言う。


小麦がハザに掛かっていた
 昔は、大抵の農家で、やはり食料確保のため麦を栽培していた。これは小麦。薄力粉用と、パン
も焼ける強力粉用だと言う。パン用の小麦は日本では栽培が難しいと言われ、北海道や、岩手・青
森辺りで少量が栽培されているだけと聞く。それを、ここ飯田地方で栽培しているところがあると
いうことに少々驚いた。
極力農薬は使わずに・・・


ミニトマトの野生種。



温室の中には鶏小屋がある
 ハザの向こうには、ナス・トマト・ピーマンなど野菜の畑になってい
る。赤、オレンジ、グリーン、チョコレートとヨーロッパ原産というこ
とだが、なんともカラフルである。野生種だというミニトマトもあり、
味見をさせてもらった。特有の香りと、酸味の効いたその味は、トマト
本来の味を思い出させてくれた。驚いたことに、ここのトマトは数年育
ち、実を付けるという。見ればその苗は木になっていた。野菜も環境で
その形態を変えるようである。
 温室は二つあり、その中には鶏の小屋がある。その小屋の中では鶏た
ちが元気な声を上げていた。話しによると、この鶏たち、普段はこの温
室内に放し飼いにされているとのこと。当然、野菜に付く害虫などは彼
らの餌になる。そのため、ここでは農薬は使わないという。「卵も生み
ますが、それは副産物ですね。一石二鳥、いや、一石三鳥くらいの価値
はありますよ」と笑いながら言った。
 畑には他に、キュウリ・唐辛子を始め、ハーブやアロエまでがあり、
まるでそれは、おもちゃ箱のようであった。作物の説明する彼は、活き活きとして見える。たぶん
それは、胸を張って自分の育てた野菜たちを送り出せる、自信のようなものなのだろう。ここまで
くるのには並大抵の努力ではなかったと思うが、「農薬を使うのは嫌いなんですよ」と事も無げに
言うその言葉に、少々形が不揃いでも、時間がかかっても、農薬を使わずに安全で味の良い野菜を
作るという、彼のこだわりと情熱を見た気がした。そしてなにより、作物への想いを感じた。
白ナス
白いナスもある
唐辛子01
カイエンペッパー
ピーマン
ルーマニアピーマン
チョコレートピーマン
チョコレートピーマン
消費者として・・・
 物を買うとき、どうしてもその見た目を重要視してしまう我々消費者。野菜などの農作物も例外
ではなかったように思う。食という本来の形を忘れずに、こだわりを持って作物を作る生産者が、
それを持ち続けていける、それは私たち消費者の肩にも掛かっているのではないのだろうか。自分
たちの反省も含め、そんなことを考えさせられる農園訪問となった。
 この後、古代米を作っている田んぼも見せてもらったのだが、それは次回、第2回として載せる
ことにする。
取材協力
農園さくら















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スローライフにこだわるトップ第2回 活きた土と古代米