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ここ飯田地方、かなり減ってきてはいるが、まだ田や畑は残っている。私が子供の頃は、一年間
全て賄えなくても、自宅で食べる米を作っているところは多かった。足らない分は、雑穀や麦を混
ぜ食べたものである。
何年か前から私の家では、健康を考えて雑穀や黒米などを混ぜてご飯を炊いている。たまたま、
近くのスーパーマーケットで味の良い無農薬の黒米を見つけた。それを生産したところが地元にあ
ることから、妻と共に訪ねることにした。
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◆ そしてその農園へ・・・
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いくら地元とはいえ初めて行くところである。問い合わせの返事とし
て届いた、メールの内容を頼りに目指す農園まで。
農作業中にお邪魔したのだが、ご主人は快く向かえてくれた。目の前
には大きな温室がある。以前、花の栽培に使っていたものを、野菜作り
に利用しているということだ。
中に入りまず目に付いたのは、ハザに掛かった麦。米の収穫が落ちた
時の、食料確保用に作り始めたらしいが、もう10数年になると言う。
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小麦がハザに掛かっていた
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昔は、大抵の農家で、やはり食料確保のため麦を栽培していた。これは小麦。薄力粉用と、パン
も焼ける強力粉用だと言う。パン用の小麦は日本では栽培が難しいと言われ、北海道や、岩手・青
森辺りで少量が栽培されているだけと聞く。それを、ここ飯田地方で栽培しているところがあると
いうことに少々驚いた。
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◆ 極力農薬は使わずに・・・
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ハザの向こうには、ナス・トマト・ピーマンなど野菜の畑になってい
る。赤、オレンジ、グリーン、チョコレートとヨーロッパ原産というこ
とだが、なんともカラフルである。野生種だというミニトマトもあり、
味見をさせてもらった。特有の香りと、酸味の効いたその味は、トマト
本来の味を思い出させてくれた。驚いたことに、ここのトマトは数年育
ち、実を付けるという。見ればその苗は木になっていた。野菜も環境で
その形態を変えるようである。
温室は二つあり、その中には鶏の小屋がある。その小屋の中では鶏た
ちが元気な声を上げていた。話しによると、この鶏たち、普段はこの温
室内に放し飼いにされているとのこと。当然、野菜に付く害虫などは彼
らの餌になる。そのため、ここでは農薬は使わないという。「卵も生み
ますが、それは副産物ですね。一石二鳥、いや、一石三鳥くらいの価値
はありますよ」と笑いながら言った。
畑には他に、キュウリ・唐辛子を始め、ハーブやアロエまでがあり、
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まるでそれは、おもちゃ箱のようであった。作物の説明する彼は、活き活きとして見える。たぶん
それは、胸を張って自分の育てた野菜たちを送り出せる、自信のようなものなのだろう。ここまで
くるのには並大抵の努力ではなかったと思うが、「農薬を使うのは嫌いなんですよ」と事も無げに
言うその言葉に、少々形が不揃いでも、時間がかかっても、農薬を使わずに安全で味の良い野菜を
作るという、彼のこだわりと情熱を見た気がした。そしてなにより、作物への想いを感じた。
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白いナスもある
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カイエンペッパー
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ルーマニアピーマン
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チョコレートピーマン
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◆ 消費者として・・・
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物を買うとき、どうしてもその見た目を重要視してしまう我々消費者。野菜などの農作物も例外
ではなかったように思う。食という本来の形を忘れずに、こだわりを持って作物を作る生産者が、
それを持ち続けていける、それは私たち消費者の肩にも掛かっているのではないのだろうか。自分
たちの反省も含め、そんなことを考えさせられる農園訪問となった。
この後、古代米を作っている田んぼも見せてもらったのだが、それは次回、第2回として載せる
ことにする。
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